秘密のデート

RINGOKAN

2009年12月24日 18:00









闇夜に浮かぶその夜景は、まさに最高のハーバービュー。

港のすぐそこにはホテル・ニューグランド、隣にはスター・ホテルがある。

夜の氷川丸は輝きの中に浮かんでいた。





僕がかじかむ手でポケットから取り出したのは

最近最も好きなモンテクリストNo.4。

外気は非常に冷たいものの、ココは僕だけの特等席だ。











船上から眺めるその景色は、陸上から眺めるそれとはまったく違い

心が洗われるような気分にさえなる。

コスモクロックは七変化、大の大人を子供にさせる。

横浜の夜空にオリオン座や双子座が、くっきりと見えたのが不思議だった。

西から連なってやってくる灯の列は、羽田に向かう飛行機の列。

ときどきこんな時間があるからこそ、まだまだ人生は辞められない。











子供の頃に家族と紅白を見たあと、午前零時丁度に

浦賀水道から聞こえてくる、タンカーの汽笛の数々に僕の心が躍った。

ココにくると、なんだかソレと同じ匂いがする。











船上でこの海上を眺めている間、僕の頭の中は

アノ唄が何度も何度も繰り返される。

ココは横浜、僕が生まれた街。

ココでクイーンエリザベス2世号を、家族とまじかで見た。











夜明けの街ですれ違うのは 、月の残骸と昨日の僕さ。
二度と戻れない境界を越えた後で、嗚呼、この胸は疼いてる。
振り向くたびにせつないけれど、君の視線を背中で受けた。
連れて帰れない黄昏に染まる家路、嗚呼、涙隠して憂う。

君無しでは夜毎眠らずに、闇を見つめていたい。
マリンルージュで愛されて、大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて、まだ離れたくない。
早く去かなくちゃ、夜明けと共にこの首筋に夢の跡。

愛の雫が果てた後でも、何故にこれほど優しくなれる。
二度と戻れないドラマの中の二人、嗚呼、お互いに気づいてる。

棄ても失くしも僕は出来ない、ただそれだけは臆病なのさ。
連れて歩けない役柄はいつも他人、嗚呼、君の仕草を真似る。

好き合うほど何も構えずに、普通の男でいたい。
ボウリング場でカッコつけて、ブルーライトバーで泣き濡れて
ハーバービューの部屋で抱きしめ、また口づけた。

逢いに行かなくちゃ、儚い夢と愛の谷間で溺れたい。














関連記事