秘密のデート
浦賀湾から横浜横須賀道路、そこから神奈川3号狩場線へ。
ゆるやかに湾岸線に合流したら、水面輝くベイブリッジを渡る。
ループを流れたら、大黒埠頭近くのパーキング・エリアへ。
僕等の真上に浮かぶのは、月の残骸。
夜明けの高速ですれ違う車は、その全てがスローモーションのよう。
大黒埠頭。
僕も一度、この真冬に温かい珈琲とともに
ここでゆっくりと葉巻を燻らせてみたかった。
山下公園に停泊していたマリンルージュと氷川丸。
明治・大正時代に建設された、赤レンガ倉庫。
マリンタワーとコスモクロック21。
飛び交う鴎たち。
向こうに見えるのは、横浜中華街東門とホテル・ニューグランド。
1927年創業のここには、あのBAR シーガーディアン。
隣のスター・ホテル横浜には、ブルーライト・バーがある。
横浜。
ここは僕の想い出の地。
昨日、中学生以来久しぶりに登った粟ヶ岳。
山の麓から自らの足だけで登ってみた。
そこから眼下に望む、素晴らしく穏やかな景色。
僕等は臆病だから。
君とだから、その全てが美しく見える。
夜明けの街ですれ違うのは 、月の残骸と昨日の僕さ。
二度と戻れない境界を越えた後で、嗚呼、この胸は疼いてる。
振り向くたびにせつないけれど、君の視線を背中で受けた。
連れて帰れない黄昏に染まる家路、嗚呼、涙隠して憂う。
君無しでは夜毎眠らずに、闇を見つめていたい。
マリンルージュで愛されて、大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて、まだ離れたくない。
早く去かなくちゃ、夜明けと共にこの首筋に夢の跡。
愛の雫が果てた後でも、何故にこれほど優しくなれる。
二度と戻れないドラマの中の二人、嗚呼、お互いに気づいてる。
棄ても失くしも僕は出来ない、ただそれだけは臆病なのさ。
連れて歩けない役柄はいつも他人、嗚呼、君の仕草を真似る。
好き合うほど何も構えずに、普通の男でいたい。
ボウリング場でカッコつけて、ブルーライトバーで泣き濡れて
ハーバービューの部屋で抱きしめ、また口づけた。
逢いに行かなくちゃ、儚い夢と愛の谷間で溺れたい。
関連記事