この先暫く観ることができないと言われていた先日の皆既月食。
この夜は夕暮れから天体ショーがはじまっていた。
僕は時間や月の状態をを気にしながら仕事をこなす。
そしてお客様たちと一緒に外へ出て、酒や葉巻をいただきながら
皆でほぼ真上にある月を眺めた。
遠くにある丸い月は、ときどき雲の間から顔をのぞかせながら
僕らにばれないように少しずつ形を変えてゆく。
そして赤くなった丸い月があたりを不思議な世界に一変させた。
初めてお逢いする方々と同じ場所で同じ月を眺める。
なんとなく皆が丸い月のようにひとつの輪となった夜
僕はいまにも月が手に取れるように想える距離で
偉大なる宇宙と時間を肌で感じる。
目の前に広がる夜空には何万年も前の明かりを放つ星々が
赤く丸い月を取り巻くように整然とそして力強く輝いていた。