パリ市庁舎近くのリボリー通りでは、流行の先端を行く様々な商品を安く売る大衆的な店が軒を並べ、一年中ごった返しているらしい。
そんなパリでも、B.H.Vの左脇から二本目の道のマルタン通りは木立があり、パリの古い面影を残しているみたいだ・・・
メトロのシャトレ・レアール駅あたりに、パリの胃袋といわれた中央市場があった頃は、市場に買い出しにくる食料品店の主や、料理人などの食いしん坊を相手にする大・小のビストロが市場のまわりにひしめいている・・・
「ブノワ」は、その中のひとつでありリヨン料理で名声を得た、開店当初から美味しさでトップクラスのビストロであったという。
店は1912年の創設であり、老舗のビストロらしい古風な店構え。
現在の当主は四代目、代々開店当時からの評判を立派に維持し、旨い料理を出す珍しい例のビストロらしい。
ゴーエミヨのガイドでは16/20点、ミシュランでは一つ星という高成績である。
彼は、そのビストロが大のお気に入りだ。
彼の愛車は、'69 のベンツ。
彼が生きた時間と、同じ時間を生きているドイツの銘車だ。
シャンパンゴールドに輝くボディの手入れは、彼の仕事そのものである。
やんちゃな時代を過ごしてきた彼、そんな彼との再会は嬉しい再会でもあり、僕にとって心地よい緊張感でもあった。
時々パリの「ブノワ」に行くことのある目利きの彼。
年に数度、ヨーロッパにお客様が喜んでくれる商品を仕入れに行くという。
「経営者である前に、職人でありたい」 という彼、感動する考えを聞かせていただいた。
そんな先駆者であり、努力家である彼は、「本物職人」。
ナチュラルな彼が、ひと時しかない時間を優雅に楽しむ・・・
今回、気に入ってくれたお酒の一つが、カリブ海のラム。
彼が「親友なんだ」と呼んだ、元バーテンダーの愛車はカリブ海の夕日を思い出させるような、真っ赤なマセラッティ。
「ドイツ」と「イタリア」。
そんなちぐはぐした色でさえも、お互いがどこかでリスペクトしている。
同業者の
後輩を、「リスペクトしているんだ。」と、語ることのできる彼。
評価の仕方がとても素敵でした。
奥様と二人三脚で仕事をしている彼が最後に残した台詞、 「僕らは二人で " ひとつ " 」 だと。
素敵な夫婦を象徴する、美学を感じさせる素敵な言葉でした。
BENOIT ブノワ
20,rue St.Martin 75004 Paris
TEL:01-42-72-25-76