深夜の心療内科
生活のなかにおける「ゆとり」。
人生のなかの「ゆとり」。
できることなら、いつまでも
感じていたい・・・
誰かが言った。
「BAR とは、深夜に開業する心療内科である」と。
ここは田舎にある、普通のうらぶれたBAR である。
ときどきココへ来ては、「ゆとり」を愉しむ。
そう、そうではない人生を過ごしているとしても。
ストーブの上で温められた銅鍋には、数滴ローズマリーの精油が。
カウンターに置かれたのは、庭から摘んだミントとラベンダー。
「ゆとり」を感じながら、心底リラックスするには
薫りが必要なのである。
それは微かで、気にならないほど奥ゆかしく。
意識を働かせれば、先ほどまで誰かが燻らせた
ラモン・アロネス・ヒガンテスの薫りも。
この葉巻は、つい先ほどまでペニンシュラにある
CIGAR CLUBのウォークイン・ヒュミドールで眠っていた。
心の感覚を目覚めさせ、精神的な過労と無気力を
心地よくリセットしてくれるのはローズマリー。
ラベンダーの特技は心身の鎮静作用。
それは非常に穏やかに。
自律神経のバランスも調えてくれ、精神的なリラックスを得る。
そのなかに潜むミント香は、頭の中をスッキリとさせてくれ
明日への活力がわいてくる。
鼻の奥にある嗅細胞、ここで感知された香りは電気信号に変換。
大脳に届いたその電気信号は、僕等の生理機能をコントロールする
部分に深くかかわるため、僕等は心の底からリラックスを得るのだ。
ほのかに薫るハーブの香りと、紫煙がもたらすゆるやかな時間。
ココはそれらに満たされた、田舎にあるうらぶれた異空間。
ここの医師は毎晩患者にこう言います。
「どうぞ ごゆっくり。」
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