僕は子供の頃から、それほど音楽に興味がない。
唯一音楽を聴いていた時代があるならば、それは10代の頃か。
新しく出されるシングル盤のレコードを素早くレンタルし、誰よりも早く歌を覚え
そして、ダビングしたカセットテープを自慢し、友人等の分も自慢げにコピーする。
そんな友人等を横目に、僕はいつもアイドルではない、いつも同じ歌い手の
カセットテープに手を伸ばし、いつも好きな歌だけを、何度も何度も聴いていた。
だからサーフボードにまたがり波待ちをしていても、独り葉巻を燻らすときも
僕の頭の中に自然と流れ出す曲は、まさにその当時の歌ばかりなのだ。
僕が18歳の冬、後輩が単車で事故り、誰よりも早く逝ってしまった。
今でもその事故現場前を通ると、ある歌が蘇る。
彼の単車にはカセットデッキが埋め込まれられ
爆音とともに好きな音楽をいつも流していた。
僕が彼と最後に逢ったとき、彼の単車からはTHE MODS のヴォーカル
森山達也が唄う「 BABY BLUE 」が流れていた。
昨夜仲間達と来店してくれた彼は、中学生時代「ジェームスディーン」と呼ばれた
なかなかの色男。
物腰も柔らかく、洒落ていて、とにかく優しい男だ。
以前、10数年ぶりに逢った彼は、名古屋でモデルをこなす魅力的な男になっていた
大人になった彼と再開し、そのときから僕はスーツを " 買う " ことはしなくなった。
彼を真似て、僕もスーツは全て作るようになったのだ。
彼をカウンター越しに見ていると、必ず思い出す歌。
歌を思い出すと蘇る映像。
もしも、彼の兄貴が今でも生きていたら・・・
きっと、彼のようにイカした男になっていたはずだ、といつも想う。