「アジト」
1972年。
この映画と同時期に生まれたのは、地下組織を描いた「フレンチコネクション」。
ともにアンダー・グランドな世界を描いた作品であり
イタリアン・マフィアをイメージした、といわれるカクテルの名前でもある。
50インチ近い画面に静かに浮かぶのは、「ゴッドファザー」。
マフィアの家族愛を表現した、ともいえる名作である。
この日ここの主人から頂いたのは、巨大な葉巻ダヴィドフ・ロイヤル・サロモネス。
僕にとって最大級のシガーとの出逢いとなった。
この日ここに揃った銘酒は、食前用にB&G シャルドネ2002。
カナダのアイスワイン '99。
そして、非常に珍しい30年ほど前のコニャック、ミュコー社のXO。
それとケイデンヘッズ社のメゾン・ジェルビーと、ハイン社のシガー・レゼルヴ。
5年熟成のマディラも1本用意した。
今回用意していただいたシガーは、全てここの主人が用意してくれたもの。
各種ハバナやドミニカをはじめ、いくつかのハワイアン・シガーとマニラ物。
気持ちが良いほどのホスピタリーを、彼には感じる。
前菜として用意していただいたのは、生ハムにサーモン。
これらを口に含み少量のアイスワインに合わせる、新たなマリアージュ。
なんともふくよかな気分になる。
もちろんシャルドネの酸味や、果実香とも相性は抜群である。
それぞれの葉巻には、マディラやコニャックを合わせてみた。
ハワイから直送のチョコレートとハワイアン・シガーのマリアージュ。
地のものに、地のものを合わせる贅沢。
なかなかできない経験だ。
僕もさっそくダヴィドフ・ロイヤル・サロモネスを手にし、頭をカットする。
選りすぐられたラッパーのキメの細やかさ、微かにわかる葉脈。
そして、ハバナとは違うラッパーの質感。
異常なほどの存在感。
ラッパーの香りを嗅いでみる。
芳しい香りの中には気のせいか、ほのかな「昆布」の香りを感じた。
主体となる香りは、加湿されたタバコ葉独特の香りの中に
柔らかい羊などの革類、そして、熟しているからこその
若干残ったアンモニア臭。
もう1本あったサロモネスは、もう少しだけ寝かせてあげたら
完全な葉巻となりそうだ。
このサイズだと、どのあたりでヘッド・キャップをカットしたら良いのか・・・
と少し悩み、少しカットしたフットを炙ってみる。
フットから立ち昇る香りは、非常に穏やか。
ダヴィドフの特徴か、「洗礼されている」感じ。
もちろん最初の数口などは、それが顕著である。
定刻を過ぎ、次第にメンバーが集まりだす。
平日の6時。
この時間に開催したわりには、集まった方か。
数名がやむにやまれぬ事情で、急きょ参加できなくなったのが残念であったが。
それぞれが自由に好きな葉巻をヤリながら、好きな飲み物を合わせる。
女性同士の集まりではない。
ベチャクチャ喋る必要もない。
ここは隠れ家である「アジト」。
紫煙の行く先を見ては、静かに流れる画面に目をやる。
グラスに手を伸ばしては、葉巻を燻らす。
1972年に生まれた名画を見ながら想う。
そのとき僕はまだ5歳。
それは、横須賀市の保育園で無邪気に遊んでいた頃。
2009年1月 41歳。
素敵な時間をありがとうございました。
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